
NHK大河ドラマ「真田丸」タイトル映像制作 NHK大河ドラマ「真田丸」タイトル映像制作 実存する城跡から当時の城を
2016年1月より放送が開始されたNHK大河ドラマ「真田丸」は、激動の戦国時代を真田信繁(幸村)の視点から描いた壮大なドラマである。三谷幸喜氏の脚本により、重厚なストーリーの随所に笑いを取り込み視聴者を魅了している。大河ドラマのタイトル映像には、演者の紹介はもちろん、物語の持つイメージを表現し高揚感を持たせるという重要な役割がある。そのために、長野県の松代城など、実存する風景や城跡を撮影し実写映像の持つ迫力を生かすような取り組みが進められたという。
タイトル映像には、城壁を舐めるように映し出したかと思うと鉄砲穴の中に入り込み、ドラマのハイライトを映し出すシーンがある。この印象的なシーンのVFXを担当したのが株式会社カーキの田崎陽太氏だ。
VFXではCinema 4Dを有効に使用している。どのように活用したのか田崎氏に伺った。
「真田丸」タイトル映像の制作進行について
「真田丸」タイトル映像の監督さんとは以前もお仕事をしたことがありまして今回もお声をかけていただきました。監督と打ち合わせをしながら「このシーンはCinema 4Dでどの機能を使おうか?」「実写素材にどの方法でVFXを載せたらうまくいくか?」とアタマの中で組み立てて準備をしていました。ところが、実写素材が上がってきたのがギリギリで、実質的なVFX作業は一カ月。僕の担当したのは4カットと少ないのですが、1カット1カットの尺が長かったんです。とにかく手を動かしながら次の工程を考えていくようにしました。
僕は6年前からCinema 4Dを使用していて今でもメインツールです。なんと言っても操作のしやすさと安定性が優れています。時間のさし迫った作業が続くときにはアプリが落ちないという安心感は非常に大事です。

シーン作成にCinema 4Dをどのように使用されたか?
例えば、カメラが城壁の鉄砲穴に入っていき、ドラマの映像がインサートされるシーン。
城壁はドローンを使って撮影をしています。でも、実際のカメラはうまく壁に向かって飛んでくれません。CGで捕捉する必要がありました。そこで、Cinema 4Dのカメラマップ機能を使って実世界を3DCGで再構築することを考えました。そうすることでカメラを自在に動かすことができるようになります。
まずは撮影した実写映像の揺れを止めるため、Cinema 4Dのモーショントラックを使ってトラッキングをしています。Cinema 4Dでトラッキングするのでデータ変換の必要もなく作業が早いですよね。Cinema 4Dの3Dモーショントラッカーはオートでも充分な精度を持っていると思います。
次に3Dモーショントラックで生成されたポイント群をポリゴンペンでつないでモデリングしていきます。このポリゴンペンツールはスナップ機能がとても賢くて、ぽんぽんテンポよくモデルを作ることができます。有機的なものを作る時やリトポには欠かせません。ポリゴンペンにはナイフ機能もあるので自由度がかなり高い。こういった地形などのモデリングではかなりの時短になっています。
作成したポリゴンモデルにCinema 4Dのカメラマップ機能を使用して撮影された映像を投影しています。ただ、実際の映像を投影をしたからといってすぐにスケール感が出る訳ではありません。城壁シーンや水のシーンではとにかくスケール感を意識しました。とくに水のシーンは、たくさんのリファレンスを集めてリアルなスケールを出すよう工夫しています。
撮影した実存の城壁は、経年劣化でかなり汚れています。当時の様子とはまったく違うと思うんです。また、スケール感を意識するとどうしても足りない部分が出てくる。映っているドローンの脚を消す作業もある。それらは全てMARIで修正をしています。カメラが寄っていくので高解像度のマップ処理が必要でした。BodyPaintで4K,8Kの画像をサクサク扱えるようになると嬉しいのですが、、、
MoGraphは空気を吸うかのように当たり前に使用しています。何パターンか作っておいてた城壁のモデルはもちろん木や草もMoGraphのクローナー機能を使って配置しています。あちこちでMoGraphを使っているので語るまでもないぐらいの使用頻度です(笑)
レンダラーはOctane Renderを使用しています。とくにレンダラーにこだわりは持っていなくて、その時々の仕事の内容や技術のトレンドを見てチョイスしています。今回は監督が求める質感とスピードがマッチしたのがOctane Renderでした。Cinema 4Dのレンダラーは標準でも綺麗なので標準のままでレンダリングする仕事もありますよ。
監督のこだわり、全体のテーマ、意見を出しながら何度もリテイクを繰り返し、真田丸のタイトル映像が出来上がりました。使ったCinema 4Dの機能ひとつひとつは難しいものではありません。比較的簡単なアプローチを積み重ねて作られています。「VFXアーティストが直感的に使える」というのがCinema 4Dの魅力だと思います。
株式会社カーキについて
フリーランスの集まりを3,4年続けていましたが、今年の2016年4月に法人化しました。Music Video、TVCM、企業のイベント映像など幅広く制作しています。制作のワークフローはフリーランスの頃と大きな変化はありません。
というのも、それぞれが得意とするツールを導入しているので「ここではこのツールを使いなさい」といった縛りはなく、良いツールがあってタイミングさえ合えば柔軟に取り入れるという形態をとっています。
フリーランスで制作してきたスタッフたちなのでそれぞれの持ち味があります。モーショングラフィックスが得意、エフェクトが得意、編集が得意、アニメーションが得意、Toon系、VR系。それぞれの強みを生かしてジャンルに捕らわれず高いクオリティを保つことを目標にしています。。これからも個々の特技を生かし、カーキでしか作れないものを提供していこうと思います。
VFXコンポジッター : 田崎 陽太 氏
株式会社カーキ FaceBook : https://www.facebook.com/Khaki.tokyo/
NHK大河ドラマ「真田丸」公式サイト:http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/