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BABYMETALのための痺れるCGスペクタクルの作成 ディレクター・デザイナーの田中紫紋がBABYMETALの音楽に没頭し、Red Giantツールを使用してデザインとライブビジュアルを生み出す。

日本のBABYMETALは、ヘビーメタルという枠に収まらない存在です。メンバーのSU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALによる壮大なライブは、ワイルドで映画のような映像、壮大なステージ、何よりもその重厚な音楽で熱狂的な叫び声に包まれています。

BABYMETALは日本で生まれ、その唯一無二の存在が支持され、現在はワールドツアーやフェスを中心に世界中で活動するグループです。CG・ディレクターの田中紫紋氏は、BABYMETALの世界観のクリエイティブを多く手がけています。

私たちは田中紫紋氏と彼のバックグラウンド、BABYMETALとの仕事、そして優れた作品を生み出し、クリエイティブシーン全体を向上させるクリエイターを支援するための取り組みであるインテル® Blue Carpet Projectに参加するアーティストとしての役割について話をお伺いしました。

田中:私は日本の横浜出身のアニメーター、デザイナー、イラストレーター、ディレクターです。現在、CMやプロモーションビデオなど、さまざまなプロジェクトに関わっています。大学での作品として制作したストップモーションアニメーションを機に、ニュース番組のプロデューサーから番組オープニング映像の依頼を頂きました。そのプロジェクトのアニメーションから約20年間、フリーランスとして仕事をしています。

田中: インテル® Blue Carpet Projectは、さまざまなプラットフォーム、さまざまな創作ジャンルで優れた作品を生み出し、新たな挑戦をし続けるクリエイターを、半導体メーカーのインテルが支援するプロジェクトです。Blue Carpet Projectでは、講演の手配、機材や技術的なサポートをして頂いております。何よりもBlue Carpet Projectでは講演やミーティングを通して多くの出会いがあります。その中で自分が出会ったことのないジャンルのクリエイターと出会うことができていて、それがこのプロジェクトに参加できている大きな財産だと感じています。

田中:まず、BABYMETAL結成当初の始まりの曲である「ド・キ・ド・キ☆モーニング」という曲のMVの監督を手掛けました。その後はシングル、アルバムのジャケットデザインを手掛けるようになり、BABYMETALがライブを行うようになってからは、ライブで使用する映像やデザインを手掛けるようになりました。

田中:私はRed GiantのLooks を自分のほぼ全てのプロジェクトのカラーグレーディングで使用しています。色に関する膨大なパラメータや効果を一つの画面で調整できる事が非常に気に入っています。Looksのプリセットでも一発で良くなるので、作業時間の短縮にもなっています。また、Primatte keyer にてキーイングを行い、Particular、Form、Mir等を使用してゼロからビジュアルを作成します。ShineやUniverse等のエフェクトもよく使います。Universeのツール達は、本来複雑な工程が必要なエフェクトがシンプルにまとめられているので、思いがけない効果を生み出す事も多いですし、自分の思い描いていたよりも上のエフェクト感も出してくれるので気に入っています。

Red GiantツールはAfter Effectsユーザーにとって欠かせないもので、Red Giantのエフェクトは自分の一部になっています。絵を描く時に絵の具や筆を選ぶような感覚でRed Giantのツールを選んで使っています。しかしまだ、長年使っていても全然知らない機能やパラメータを見つけることがあって、日々新しい発見があります。それはとても楽しくて新しい発見で、自分の未熟さを実感することもありますが、自分の表現にまだ可能性があると思うとワクワクします。

田中:新しいプロジェクトの準備をする際には、プロジェクトのさまざまな側面に対して大まかなコンセプトを映像や静止画で作成します。例えば、ライブではステージデザインを担当するセクションがそのビジュアルを基にデザインを構築します。BABYMETALの沖縄公演では、デザインに沖縄の伝統的な守り神であるシーサーを取り入れました。そのシーサーはステージ上でメンバーが口から登場できるほど大きく作られていました。自分のデザインしたシーサーが立体になってどのような形になるかわからなかったので、本当に感動しました。

ミュージックビデオやコンサートビジュアルに関しては、いつもその曲だけをずっと聴き続けます。曲に完全に没頭し、いつでも頭の中で再生できるようになるまで浸り、その後に作業を始めます。歌詞やテーマを意識してはいますが、あまり気にしないです。その代わりに、曲全体が持つイメージを捉え、曲が引き起こす感情をビジュアルとして全面に表現できるように自分からアウトプットします。

田中:BABYMETALとの関わりがあるため、音楽関係のビデオ、ビジュアル、ジャケットの制作を依頼されることがよくあります。また、テレビ番組の映像も手掛けます。プロジェクトごとに自分の求められているクリエイティブが違うので、その違いを楽しんでいます。プロジェクトに合った新しいクリエイティブを作り出せた時は本当に気持ち良い時間です。また、大学の友人とレトロスタイルのアニメを制作したりもします。

田中:当たり前のことのように思えるかもしれませんが、作品を完成させることが大切です。学生のうちは、作るという事に対する気持ちが強くて、作業をしただけで未完成のまま満足してしまう事があると思います。しかしそれは、未完なので周囲に対してアウトプットできるものではありません。プロの世界では完成させてから、に良くしていく作業が多くあります。完成度というものは自分の中で完成させて1%。そして、何度も自分や他人とブラッシュアップしていって100%だと思っています。そのように完成品が自分や社会と向き合うことで、初めて作品が自分の経験値になると感じます。仕事を始めると、自分をアピールするためには完成した作品が必要になります。そして、プロの環境では完成した作品だけが評価されるので、作品を完成させるという心構えを持つことが重要です。


Mike Hoiumは、ミネアポリスのMaxon Oneユーザー。