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Maxon Oneで描くディストピアの未来 ブライアン・ウィリアムズがロボット強盗劇『Botching』を具現化
ブライアン・ウィリアムズ監督(SuperSixtyEight)の新作『Botching』は、日常業務を担うロボットが普及した未来を描きます。作品はハッキングされたロボットを追い、悪に染まるロボットと、それを取り締まる勢力の対立に迫ります。荒廃した都市やロンドン地下鉄を使った金塊強奪も見どころです。
ウィリアムズ氏にインタビューし、彼がCinema 4DとRed Giantツールを駆使して一人で映画を制作したプロセスについて伺いました。
現在の仕事に就いた経緯を教えてください。
ウィリアムズ: グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、アルバムカバーを制作したり、アイルランドでU2の仕事をしたりしていました。あるとき、偶然にもモーショングラフィックデザイナーと勘違いされてプロジェクトを依頼され、そのままモーショングラフィックスの道に進むことになりました。そこからライブアクションのディレクションを経て、10年間テレビCMの監督を務めました。
パンデミック直前に初めての子供が生まれる予定だったため、出張を避けようと考え、モーショングラフィックスに戻ることを決めました。これを自己研鑽の機会と捉え、それが今の始まりです。
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映画のインスピレーションはどこから得ましたか?
ウィリアムズ: 発想の原点は、地下鉄システムへの興味からです。ロンドン市民にとって交通網は当たり前の存在ですが、私は魅力を感じており、物語の舞台にふさわしいと思いました。ちょうどその頃、Wired誌でロボットのハッキングに関する記事を読み、まだその行為に特有の俗称がないことに気付きました。ここから「ボッチング(Botching)」という言葉が生まれました。つまり、ロボットをハッキングすることは「botch job」というわけです。
さらに調べると、第二次世界大戦中に金や資金が地下鉄で移送されていたことを知りました。『ダイ・ハード』が好きな私は、この設定で強盗映画を作ると面白いのではと考えました。物語としては非常にクールなコンセプトだと思います。
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映画制作のために3Dのスキルを再習得した経緯を教えてください。
ウィリアムズ: このプロジェクトは、自分のCinema 4Dのスキルを再習得するために始めました。久しぶりに使うとソフトもアニメーションプロセスも大きく進化していて、最初は全くの素人でした。それまではパッケージや基本的な3D設定程度しか経験がなく、本格的なキャラクターアニメーションなどは初挑戦でした。2年ほど一人で制作を進めるうちに理解が深まり、数日でシーンをアニメーション化できるようになりました。
ワークフローや使用ツールについて教えてください。
ウィリアムズ: すべてのアニメーションはCinema 4Dで制作し、各シーンをプレビュー用にレンダリングしました。プレビューは編集をスムーズに組み立てるために重要で、最終レンダリングにはかなりの負荷がかかると予想していたためです。このプレビューにより、シーンの見通しや効率を確認でき、最終レンダリングに入る前に調整が可能でした。友人たちがプレビュー編集を観てストーリーを理解できたことで、最終版も問題なく伝わると確信しました。
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編集がほぼ仕上がると、3Dシーンやロボットのディテールを整え、ライティングや必要な要素を更新していきました。PremiereとAfter Effectsを使ってさらに編集を進め、主にRed Giant SuiteのMagic Bullet Looks でカラーグレーディングを行い、Colorista でカラーを調整し、全体の統一感を保ちました。スタイル上の狙いは、主要な要素に焦点を当て、視聴者がCGとして評価せず、純粋に映画として鑑賞できるようにすることでした。
Real Lens Flaresを多くのシーンに使い、Universe HUD Componentsを画面表示に使用しました。各ビルボードやポスターはすべて自作し、さまざまなRed Giantプラグインと統合しました。Universe Camera Shakeは自然なカメラの動きを生み出し、VFX Bangで銃撃のエフェクトも多用しました。ショットごとに異なるRed Giantツールを使い、コンポジットに取り組みました。
組み立て作業は膨大でした。各シーンは自宅や手頃なレンダーファームでレンダリングされ、外部の納期がなかったため、じっくりと時間をかけられました。当初はフルカラーでレンダリングしましたが、最終的にはモノクロの方がCGらしさが抑えられ、信頼する友人たちにも好評だったため、そちらを選びました。
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ハイディテールな都市や街のシーンを作成する際のポイントを教えてください。
ウィリアムズ: 物語を伝えることに集中しましたが、シーンの構築やテクスチャリングにもかなり力を入れました。街並みのショットにズームインすると、細部まで作り込まれているのがわかります。パブの中で歩いている人々や電話ボックスに立っている人など、細かいディテールが隠れているんです。このレベルの細部は非常に重いレンダリング作業になりましたが、Redshiftがうまく対応してくれました。
しかし、シーンに汚れや荒れた雰囲気を出そうとしたところ、そうしたディテールが最終的には失われてしまいました。同様に、街中を移動するシーンも撮影しましたが、ストーリー進行に不要なものは削ることにしました。実際の撮影でも、シーンのディテールを作り込んだのに、浅いフォーカスで撮影してその魅力が伝わらないことがあります。今回は私が「セット装飾者」だったので、詳細を捨てるのは悔しかったですが、それが最良の判断でした。
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この世界を将来的に再び描く可能性はありますか?
ウィリアムズ: ぜひそうしたいですね。低予算の警察部門の視点から、大規模なハッキング事件に対応するという話を描いてみたいと思っています。この世界には多くの可能性があり、展開を考えるだけでも楽しいです。
ルイス・マクレガー:ウェールズ出身の映像制作およびコンテンツライター。